以前「hophophop」で少し触れたが、Yahoo!フリマでNobitattleを何着か買ってくれたお得意様が、「ハーフバックビキニを作ってほしい」というリクエストをしてきたのだった。
これまでショーツばかりを作っていた頃から、尻たぶは覆うものであるという確固たる信念の下、フルバックおよびボックスタイプのものしか作ってこなかったので、まったく未知の領域だったが、なにぶんお得意様の要望なので引き受けることにした。
しかしハーフバック。これまで、下着の販売サイトなどで存在は目にしていたけれど、フルバックが常道として、あるいは思いきりセクシー方面に寄せたTバックやジョックストラップなども、意図としては理解できるのに対し、ハーフバックというのはその名称が示すとおり半端な印象があり、ゆえにいちばん縁遠さを感じていた。
それに取り組むことになった。これがいわゆるビジネスというものだな、などと思った。好きだから、自分が穿きたいから作るのではない。客の注文で作るのだから、これは純然たるお仕事である。この場合の製作の、これまでと大きく異なる点は、ゴールが霞んでいる、ということだ。これだ、という正解が自分の中にないのである。バックの型紙を引きながら、ドランクドラゴン塚地の「こうすりゃええんやろ」のメロディが頭の中で流れた。確信が持てない、覚束ない感じで事に当たるとき、いつもこれが自動で再生される。
というわけでそのとき作ったのがこちらである。
“残した布”で魅せる、“削った面”で語る。Nobitattle.
こうして画像で見ると、それまでのフルバックショーツとの違いが、そこまで劇的に感じられない気がする。アウトカーブがそのまま反転してインカーブになっている感じで、面積的にはだいぶ小さくなっている。なにぶんジョニファーはプラスチック製なので、布地が肌に寄り添い、張り付くということはないので、形をはっきり見せようという商品画像の特性上、どうしたってのっぺりした感じになってしまう。人が穿くと、実際はもっと「おおっ」となるような感じで尻たぶが出る。人って誰だろう。誰で試したん。
もちろん何枚も試作をして、こんなもんだな、という境地に至ったのだが、どうしたって確証が得られなかったので、よくフリマサイトにある、リクエスト主の名前を冠した専用の販売ページとはせず、お気に召さなかったら購入を見送っても結構ですよ、という注釈をして出品した。すぐに買ってくれた。到着後の反応も上々であった。
そんな上得意様から、「今度はリオバックビキニをお願いします」という要望が来る。すごい。また新しい地平。なんなんだろう、僕に修行をつけてくれているんだろうか。もちろん引き受ける。ハーフバックビキニのフロント部分に少し後悔の残る部分などもあり、そのリベンジも兼ねて、また挑戦することにした。
しかしリオバック。ハーフバックは、縁遠さを感じていたが、認識はしていた。リオバックは、字面を目にしたことはあったが、ほぼ未知のジャンルであった。要するにTバックでしょ、と思っていたら、ChatGPTに訊ねたところ、ハーフバックとTバックの間くらいの面積のものを指すのだ、ということを教えてくれた。ハーフバックでも半端に感じていたのに、そのさらに間の刻みがあったのだ。繊細! なんてセンスィティブな尻たぶ世界であろうか。
というわけでこの半月ほどは、わりとがっつりそれに取り掛かっていた。上得意様にはもちろんなんのアピールもしていないが、試作品は8枚を数えた。すごい労力である。でも愉しかった。なかなか実りある経験だったと思う。
というわけで完成したのがこちら。
リオは地名じゃない。男が情熱を穿く場所だ。Nobitattle.
柄は、ボックス型で出品しているものを見て、「この柄で作ってほしい」というリクエストだったので、新たに買い直して作った次第である。
正面の図はこちら。
情熱に正解はいらない。踊る身体が答えだ。Nobitattle.
立体的だし、柄合わせはばっちりだし、我ながら非常にいい出来である。
これはいいな、なんなら自分用にしたっていいくらいだ、などと思いながら、今回もやはり奥ゆかしく、専用ではなく「よろしければ」という感じで出品を伝えた。すぐに買ってくれた。紐なしで、という注文だったので、ウエストゴムの具合が少し心配だったのだが、穿いた結果、問題なかったそうで安心した。ただし、「これはリオバックというより、少しTバック寄りですね」という感想も付されていて、うひゃあ、と思った。ここまでやると、Tなのか。センスィティブ尻たぶ世界、奥が深すぎるぜ。