オリT1

 カッティングマシンを買った。去年ひょんなことからその存在を知り、絶対に手に入れようと思い、コツコツ貯金をして、年明けにようやく購入することができたのだった。
 カッティングマシンとはいかなるものかというと、機械にシートをセットすると、パソコン上で制作した画像を、カッターが目まぐるしく動いて、その輪郭線どおりに切ってくれるというものである。シートは主に2種類で、シール(ステッカー)用のシートと、アイロンプリント用のシート。
 まず届いた直後は、シール用のシートで実験した。シールは剥がして貼りたい場所に貼るだけだから、アイロンプリントに較べて敷居が低かった。しかしやってみるとこれが思ったより難しく、カス取りといわれる、切れ目の入ったシートから、シールとして残さない部分を除く作業で苦戦した。なにしろシールなので、剥がした先からあちこちにくっ付くのだった。これはちょっとコツが要りそうだと思った。何度か失敗したあと、ちょっと初めから細かい図案に挑みすぎたかもしれないと気づいて、はんこにもしたトランプ大統領のサインで試した。これは成功した。成功したのだが、さあこのシールをどこに貼ろうかと思案して、途方に暮れた。大の大人なので、シールを貼りたい場所なんて別にないのだった。ましてやトランプのサインである。ユーチューブを見ると、ステッカーというものは車やバイクに貼りがちなものらしいが、僕は車にそういうものを貼る趣味はない。繰り返しになるが、ましてやトランプのサインである。なんの主張だ、という話だ。それで仕方なくファルマンに、「うちにトランプが来て、この食器棚の側面の壁にサインしていった、っていうのはどう?」と提案するが、「貼るな」と却下された。そんなわけでトランプのサインのステッカーも、本体機器のお試しで付いてきたステッカー用シートも、使い道にあぐねて放置されている。
 もっとも、そもそも僕がこの機械に心を奪われたのは、断然アイロンプリントのほうの用途だったのである。なにを隠そう、布製品にオリジナルのデザインを施すことを、これまで僕はずっと希求してきたのだ。布に描けるペンだったり、消しゴムはんこだったり、刺繍だったり、それらはすべてオリジナルの布製品を生み出すためだった。その短くない希求の旅路において、なぜこの機械の存在が僕の目に、耳に、届かなかったのか。これだったのである。したかったことは、要するにこれだったのである。
 というわけで満を持して、アイロンプリント用のシートを使って試作をした。アイロンプリント用のシートは、粘着性はあるもののシールとは違うので、カス取りもはるかにやりやすかった。そしてこのようなものが出来上がる。


 フレンズ、スピークトゥ、フレンズ、アバウトオン、フレンズ。
 友達は友達に向かって友達の話をする。
 いつかどこかのブログに書いた、友達が多い人が話題をたくさん持っているのは、結局友達Aに友達Bのエピソードを話し、友達Bに友達Aのエピソードを話しているだけのことだ、という内容の英文である。
 裏はこう。


 バットアイドントノウザットフレンズ。
 でも俺はその友達のことを知らないんだ。
 知らないし、興味もない。そもそも俺といるときに、ここにいない人の話をするのはやめてほしい。でも友達が多い人ってそういうのを本当にお構いなしに喋る。
 そういうTシャツ。見ての通り、シートはとてもきれいにカットされ、アイロンで貼りつけると本当に既製品のようになる。もちろん洗濯しても大丈夫。すごくいい。すごく嬉しい。すごく愉しい。ずっとこれがしたかったんだ。たくさん作ろう。
 今年の夏はオリジナルのTシャツばかりを着ることになりそうで、今から待ち遠しい。
 ちなみに写真の、精悍な体つきのモデルは僕である。筋トレをしつつ、オリジナルTシャツも作って、ダブルでTシャツ姿がキマる男になりたい。