トートバッグ その1


 これまで何枚かTシャツを作ったが、実はまだこれを使っていなかった。パッピーナの中には、それのことを奇異に思う者もあったろう。深い意味はない。強いて言えば、満を持したかった。下手なもので使いたくなかった。それでいろいろ考えていた。
 なんのことか。それはもちろんパピロウオリジナルキャラクター、ヒットくんとクチバシである。
 デザインといえばなんてったってキャラクターだ。商品展開を考えたとき、キャラクターの存在はでかい。っていうかキャラクターが当たればもうこっちのもんだ。
 というわけで作った。


 なぜか唐突にトートバッグ。トートバッグも、素材Tシャツを買うウェブサイトで売っていて、そういうのもいいかもなあと思って試しに買ってみたのだった。生地はまあまあ厚手のキャンバスで、縦横のサイズは写真のとおりだが、マチも10センチ以上あり、なかなかの容量である。僕が基本的に大荷物持ちなので、せっかくなら大きいトートバッグがいいと思ってこのサイズを選んだ。
 中央にはオーソドックスなヒットくんが立ち、その上にはロゴ。このロゴのことで悩んでいた。この英文の意味だが、察しのいいパッピーナならばお気付きだろうが、僕の座右の銘であるところの「なやむけどくじけない」である。一般的な常套句として「DON'T WORRY」ということがいわれるが、世界一やさしい心の持ち主である僕はWORRYを許容する。というより、WORRYせずに生きるのは不可能だと思う(ルー大柴みたいな物言いになってしまった)。それでもってWORRYはいくらでもしていいけど、絶望してしまうこと、くじけてしまうことだけはないようにしよう、といっている。別に呼びかけているわけではないけれど。ちなみに「なやむけどくじけない」は、いままで「NAYAMUKEDOKUZIKENAI」とローマ字で表したりもしていたが、なんかそれもなあ、と思うようになって、このたび正式な英訳をこう定めた。
 これの裏側はこう。


 こちらはクチバシ。こちらのフレーズも、話せば長くなる。9年前の東日本大震災の際、放射能のことなどを闇雲に心配するファルマンに対し、「杞憂」という消しゴムハンコを彫って、当時生後数ヶ月のポルガのスタイに捺したりしたが、今回も時節柄そんな意味合いを込めようと思い、当初は「needless anxiety」はどうかと考えた。「不必要な憂い」である。しかし表面では悩むという行為を肯定しているので、裏表で意味がちぐはぐになるし、そもそも放射能にしろコロナウイルスにしろ、うろたえすぎるのはもちろんよくないにしても、しかしあまりにも「関係ねえ、気にすんな」というのも、いわゆる正常性バイアスというやつで、特に今回はそういう「自分は平気」という過信がいけないんだ、ということがいわれているので止めた。それでこうした。「EVERY LITTLE THING」ではない。「EVERY LITTLE THING」というのは、「すべての小さなこと」という直訳から、たぶん「どんな些細なことであろうと……」みたいな意味合いになってくるのだと思うが、僕がいいたいのは、「ありとあらゆることはそんなに大した問題じゃない」ということで、だとしたら語順が変わって、こうなるのではないかと思った。やっぱり「杞憂」と意味は近いが、少しぼやかした。意訳するならば「知ったこっちゃない」あたりになると思う。まあ世の中、実に知ったこっちゃないことばかりである。
 そういうバッグ。ところで先日布マスクを実家に送った際、これも1枚一緒に送ったのだった。「なるべく人目につくところで使用するように」と母に伝えたが、考えてみたら外出自粛の真っ最中であり、宣伝効果は望めない。もっとも外出自粛に関係なく、母に使用させたところでそれほど関東人の目に触れるとは思えない。小池都知事の布マスクは、一部で「おしゃれ」と話題になっているらしいが、あれは都知事の近所の人が作ってプレゼントしたものらしい。ずるいな。俺の家の隣にも小池都知事が住んでればよかったのに。