キャスケット その1


 外出時は基本的にキャスケット帽を被るのだけど、あまり種類を持っておらず、服に合わせて帽子も選べればいいんだけどなー、ということを常々思っていて、しかし帽子ってわりと高価だし、その上あまり「これ」というデザインに出会わない。デザインというか、要するに生地だ。色にしろ柄にしろ、とにかく生地。無難なものがなんだかんだで売れるからだろう、販売されているのは無難なものばかりなのだ。さらにいえば、僕の頭周りが大きいという理由によって、Lサイズではダメで、「フリーサイズ」なんてもってのほかで、XLサイズでなければならないので、ますます選択肢は減る。そんなわけで帽子のレパートリーはいつまでも増えずにいた。
 そんなある日、図書館で服やバッグを目的に裁縫本の棚を眺めていたら、手作り帽子の本があるのを見つけ、そういえば前からそういう類の本が目には入っていたものの、自分には無関係だと気に留めていなかったが、帽子もまた自分好みのものを自分で作ればいいんだな、と思い至った。
 というわけで作った。


 僕サイズに作ったものだが、モデルをポルガにお願いしたため、大きい。しかし顔が隠れて好都合である。
 見ての通り、ごく普通のキャスケットである。売ってるやつである。できた。できるんだ。
 しかも作ってみたら、思っていたより材料も労力も簡素で、なんだか拍子抜けした。緑色が主体のチェック柄の、ウールめいた、あまり安っぽくないポリエステル生地なのだが、実はこれ、ダイソーで買った。ダイソーではぎれとして100円で販売していたものが、1枚ではさすがに足りなかったが、2枚あれば十分だった。


 内側はこのようになっている。内布は家にあったもの。以前働いていた縫製工場でもらったものなので、実は表地よりも、いい生地だと思う。頭に触れる部分には、本に書いてあった通りサイズテープなるものを縫い付ける。これをすると途端にちゃんとした帽子っぽくなった。ツバの部分には、世の中には帽子のツバ専用のプラスチックの製品があるらしいが、見たら1枚でわりといい値段がしたので、これでいいんじゃないかと、こちらはセリアで、バッグの底板という商品を買い、それを三日月形にカットして挟んで縫った。これがちょうどよい硬さと柔らかさで、ぜんぜん問題なかった。
 かくして、材料費としてはたぶん400円くらいで、帽子が出来上がった。
 ひとつ作って、できることが明らかになったので、これから念願のバリエーション増加のため、たくさん作っていこうと思う。サイズテープももう業務用っぽいのを20メートル発注した。帽子が30個以上作れる計算である。これからしばらくは、自分のために作る。さすがに頭はひとつしかないのにこんなに帽子はいらないな、となったら子どもたちにも作ってやろうと思う。
 少ない生地で作ることができるので、長らくタンスで眠っていたはぎれなども、帽子の材料として一斉に息を吹き返した感がある。なんなら、8枚のパーツを縫い合わせて作るのだが、8枚すべて同じ生地でなくてもいいのだし。手作りだからなんでもできる。愉しい。