顔パンツを巡る冒険 9 ~共布で作る顔パンツと真正パンツ~

 
 上下セットのブラとショーツ、というのがあるだろう。男はそれを希い、しかし実態としてはなんかしらの事情でブラとショーツの洗濯の周期というのはズレがちになるようで、あまり男の希望通りにはならない、という例のあれである。そしてそのことについては、男はあまり拘泥したらいけないことになっている。女子の苦労も知らないで! と怒られる。
 そんな女子の苦労を知ろうと思ったわけではないが、顔パンツを巡って大冒険を繰り広げた結果、顔パンツことマスクと、下半身に着ける真正パンツとを、同素材で作ってみたらどうかと思ったのである。これまで顔パンツのほうは、おととしからのコロナ禍で、ざっと百枚以上作ってきたが、真正パンツを作るという発想はなかった。このたび発想に至ったのは、もちろんマスクが「顔パンツ」と表現されたということが大きいが、それ以外にも個人的な出来事として、1月から2月にかけて、前記事の三角パンツの作製に取り掛かっていて、その注文が「これと同じものを作ってほしい」だったので、その作業を通して今さらながら、大抵の布製品は、よほど特殊なものでない限り、それと同じものを作ろうと思えば作れるんだ、という当たり前の事実に気づかされ、その流れから、これまで自分で作る対象として見ていなかった真正パンツも、自分で自分好みのものを作ればいいんだ、という結論に辿り着いたのだった。
 そうなのだ。自分で作ればよかったのだ。なにを隠そう僕は、真正パンツに関しては強いこだわりがあり、トランクス、ボクサー、ビキニショーツと幾多の変遷を経て、その所持数はたぶん百になんなんとするのである。しかしそれでも理想のものには出会えない。これはまあまあいいけど、でもここがなあ、みたいな箇所が絶対にある。そして完璧に満足いくものに出会えないものだから、数ばかりが増えてしまうのだった。振り返ってみれば、いったいなぜもっと早く、自分で作るという発想が生まれなかったのか。
 作るにあたっては、作り方を理解するためと、型を参考にするために、持っているものの中から、点数が80点くらいのものを1枚、解体した。ちなみに型は最近はもっぱらそれ派となっている、ビキニショーツである。腰ぐり、足ぐりにそれぞれカバーステッチがかかっているため、ほどくのはまあまあ手間がかかった。単純作業なので、リビングでテレビを観ながら作業をしていたら、そこへ娘たちが通りかかり、「なにしてんの?」と訊ねてきて、横にいたファルマンが、「パパ、今度はパンツを自分で作ることにしたんだって」と説明すると、「ふうん」とうなずいていた。僕は母子家庭だったので、定かではないけれど、たぶん父親が自分の理想の下着を作るためにビキニショーツの縫いをほどいている姿というのは、あまり当たり前のものではないのではないかと思う。でも家庭によってはそれが当たり前だったりするので、子育てってなかなかに恐ろしいものだな、と思う。
 ビキニブリーフ作りの詳細、製作にあたってのこだわりなどについては、「顔パンツを巡る冒険」の主題とは若干ずれるので、それは別記事で書こうと思う。
 かくして完成した顔パンツと真正パンツがこちらである。


 こちらである、と画像を載せようとしたのに、画像をアップロードする操作がなぜかいつまでも完遂されなくて、なぜだろうなぜだろうとしばし悩んだ末に、もしかして、と思い、試しになんでもない健全な画像と、たまたまパソコン内にあった不健全な画像を、それぞれアップロードする操作をしたところ、前者はすんなりとアップロードされ、後者はいつまでもされなかったので、どうやらGoogle様のブログでは、ビキニショーツの画像はアップしてはいけないらしい。すごくびっくりした。AIすごい。えぐい。薄目で見たらただの逆三角形の布みたいなものなのに、なんかしらの判定基準で、下着でエロいからダメー、と判定されるらしい。技術こわい。怖いし、過剰だ。暴走した風紀委員長か。押収したエロ本を、しかし実は放課後ひとりで読んで発情しているに違いない。
 画像をそんなふうに細かく判定できるのならば、こうして切々と書いている文脈も読んで判断してほしい。読んだならば、このビキニブリーフの画像が、変態的な意図によるものではなく、純粋にハンドメイド作品の紹介であるということは自明の理であるのに。FC2ならショーツの写真くらい屁でもないんだろうに!
 それでもギリギリの攻防として、画像の右下に覗けているもの、これが製作したビキニショーツである。その上部である。はじめ、じゃあ半分くらいカットすればいいだろ、ともう少し右下に広い画像でアップロードしようとしたら、それも断られ、これでやっと許してもらえた。厳しすぎやしないか。裏を返せば、お前ちょっと多感すぎないか。
 Googleのブログの機能があまりにも衝撃的で、話の主題がずれてしまった。顔パンツと真正パンツを共布で作る、という画期的な試みの話だった。素材は薄手のニットで、柄がグレーとホワイトのボーダーなのは趣味である。グレートホワイトのボーダー、かわいいよね。38歳男性(妻と娘ふたり)の、自分用だけどね。
 作るにあたり、当初、顔パンツと真正パンツを、本当に同じ材料で作れないかと考えた。可能だと思ったのだ。だってどっちも布とゴムだけで出来上がるから。でもマスクのゴムとショーツのゴムを同一のものにするのは無理だった。前者は細い必要があるし、後者は思ったよりも太い必要があった。それとよく考えたらマスクには内側にダブルガーゼも使うので、その時点で成り立っていなかった。ただし女性用ショーツならば、クロッチの存在が現れてくるので、そこにダブルガーゼを用いることによって、近付かせることはできるかもしれない。なぜそう近付けたいかといえば、これまでの冒険でさんざん語ってきたように、顔パンツと真正パンツの立ち位置を、なるべく近いものにしたいからだ。そうしたほうが、いろいろ捗るからだ。
 とりあえず両者を共布で作ることはできた。これは僕にとっての上下セットの下着のようなもので、だからなるべく統一して身に着けたいと考えている。これによって僕は、ショーツをさらしながら街を闊歩するという、いわばそんな淡い変態行為を、合法的に行なうことができるという寸法である。変態行為と言ってしまった。Googleは過剰だ、と言っておきながら、まんまと馬脚が現れてしまった。
 ちなみに、ショーツを作った、とさらりと書いたが、そんな簡単なものではなかった。なにしろこだわりが強いので、本当に自分の好きなフォルムにしようと、試行錯誤を繰り返した。繰り返しになるが、その詳細は別記事に書こうと思う。
 とりあえずここには、さすがにこうして丸めればGoogleの魔の手は伸びなかった、完成に至るまでの試作品の数々の写真を置いておく。作っては穿き、穿いては型紙を修正し、を繰り返して、気付けばこんなに作っていた。2月はやけに自分用のボーダー柄ローライズショーツを作って過した。
 

 顔パンツを巡る冒険は、これでひとまずの区切りがついただろうか。ゴールのような気もするし、単にひとつの章が終了しただけのような気もしている。コマの左下には亀仙人がいて、「もう少し続くんじゃ」と言っている気もする。そして逆にそこからが長いのやもしれない。