礼服ワンピース


 ファルマンの父方の祖父の七回忌が行なわれるということで、近所住まいなので参加する運びとなる。とはいえ、ここが岡山ならば話は簡単だったのだが、こちらの小学校には制服がないので、子どもたちになにを着せるか、という話になった。それで、ネットで安いものを買ってもよかったのだけど、近ごろ子どもの服を作っていなかったこともあって、自分で作ることにした。したのだが、ワクチンの副反応やら広島旅行やらで、思っていたよりも週末に時間が取れず、かなりバタバタした。日曜日が法事という週の、土曜日出勤を含めての帰宅後に、「月曜日はここまで」「火曜日はここまで」と、かなりキチキチな計画を組み、本当に前日の晩になってなんとか完成させたのだった。
 それがこちら。


 作り始めるにあたって、黒い布を買わなければならない、とファルマンに向かって主張したところ、常日頃から僕の布ストックのことが憎らしくてしょうがないらしいファルマンが、「あったろうが!」とすごい剣幕で言ってきて、いや、そんな、紺色とか細かいグレンチェックの生地はあったかもしれないが、真っ黒というのはないよ、よしんばあったとしてもウールとかだから暑いよ、だから買うしかないよ、と思いつつ、ないことを明らかにする悪魔の証明のためにクローゼットの中を覗いたら、こんなのがいいなと思っていたものが具現化されたような生地があったので驚いた。しかも岡山の高級コート工場でもらったものなので、たぶんかなりいい生地だ。コットンではなく、化学繊維の入った、ちょうど制服めいた素材だった。
 デザインは、腰で切り替えのあるワンピースで、スカートはプリーツスカートになっている。折り目が付きづらかったので、端にステッチを入れた。手がかかっている。


 袖口はカフス仕様で、あきを作ってボタンで留めるのだが、参考にした本がそう作っていたから従ったが、作ってから、別にこんなことしないでただの筒袖でもよかったな、と思った。時間がなかったくせに。
 着た姿はこのような感じ。


 こちらはポルガ。大きくなったものである。このところ本当に背が伸びた。もう大人用のXSサイズとかを着たりする。本には130センチまでしか載っていなかったので、型紙を補正する必要があった。腕の長さなどきっちり測って仕立てたので、ぴったりフィットしている。なかなか満足のいく出来栄えだ。


 こちらはピイガ。後ろ姿。後ろを向きながらピースを忘れないサービス精神。後ろがこのようにボタンで留める仕様になっている。ボタンホールは、数ヶ月前に購入したコンピュータミシンで、問題なく縫えた。子どものため、みたいな名目を前面に押し出して購入に至ったミシンだが、目論見通り、僕がボタンホールを縫うために今後とても役立ちそうだ。
 法事での周囲の反応も上々だった(父親の手作りと言ったら褒めるに決まっているが)。
 思っていたよりも清楚な感じに仕上がったので、ポルガの小学校の卒業式も、胸にちょっと華やかな飾りでもつければ、ぜんぜんいけるのではないかと思う。そんなことを思うにつけ、これを作ったにあたり、そういえば報酬的なものがないな、と思う。買っていたら、どうしたってひとり何千円かはしていたろう。それを、すべて家にある材料で、自前で作ったのである。0円である。おかしいな。一向にそっちの話が出ないな。不思議なことがあるものだな。