ノートパソコン入れ


 せっかくパソコンがノートパソコンなのだから、帰省に持っていこうではないかと思ったのだ。向こうでパソコンであれをやる、という明確な理由があるわけではない。主たる目的といえば、飛行機での気の紛らわしということになる。とにかく飛行機が嫌なので、往復合わせて3時間にも満たないその時間、自分が飛行機に乗って地上何千メートルの地点に浮かんでいるのだ、すなわちあまりにも死と隣り合わせなのだということを、一瞬でも忘れさせてくれるならば、どんな道具にでも頼りたいのだった。
 というわけで、これまでノートパソコンなのに家の外に持ち出す機会がまるでなかったが、ようやくそれが訪れたので、じゃあ持ち運びのための入れ物が必要だ、ということになり、作ることにした。
 そしてどうせ作るのならば、どこまでも自分専用の、このたび購入したノートパソコン専用の、ぴったりサイズで作ろうと、寸法を正確に測り、製作した。
 できあがったのがこちらである。


 グラニー風トートバッグやキャスケットその3で使用した生地をまた使う。ものすごく好きな色の組み合わせというわけでもないのだが、地味すぎず生地がしっかりしているので、なんだかんだで重宝している。
 ノートパソコンを入れる手提げ袋を作ろうと考えたとき、ノートパソコンは横で使うものなので、自然とその向きでバッグも作りそうになったのだが、そんな必要はないんだ、縦長のほうがシュッとしていていいじゃないか、と思い直し、このような形状となった。


 ノートパソコンが、このように入る。本当にピッタリである。さらには角にコバステッチを入れたので、四角いパソコンにどこまでも寄り添い、入れると気持ちがいい。てっぺんだけ、取り出しやすいように少しだけ顔を出すようにした。


 サイドポケットには、大きすぎると話題の10インチタブレット(電話機としてもバリバリ使っている)が、これもまたぴったりと入る。ノートパソコンとタブレットって、用途がだいぶ被っていて、果たしてこのふたつをひとつのバッグにまとめて収納するメリットってあるのかな、という気もする。


 反対側にもサイドポケットがあり、こちらには小さいサイズのノートと、ステッチで区切ってペンが差せるようになっている。ノートパソコンがあって、タブレットがあって、さらにノート。用途があまりにも一極集中で渋滞してやいないかと思う。
 あといつもいうけど、柄合わせがとても上手。物が入っていなければ、ポケットがあるかどうか分からないほどである。縫製の人ってそこに異常なまでにこだわるきらいがある。


 内側はキルティングの生地なので、クッション性がある。やはりノートパソコン入れなので、そこが大事だ。もっときちんと緩衝材的なものを挟み込むことも考えたのだが、使い心地が悪くなりそうだったのでやめた。
 そんなわけでノートパソコンを持っていく準備は万端だったのだが、出発前夜に、やっぱりノートパソコンなんて使わないよな、クッション付きケースとはいえいくらか衝撃は加わるだろうし、無駄に寿命を縮めるだけのことになりそうだな、ということを思い、結局ノートパソコンは帰省に持っていかなかった。その代わりノートパソコンを入れる場所には、タブレットと接続しているBluetoothのキーボードを入れた。ずっと前に「3点セット入れ」というものを作ったが、こうなるとほとんどそれと一緒である。それで結果的にそれらは役に立ったかといえば、大方の予想通り、タブレットだけ使い、キーボードも紙のノートも、使うことはなかった。まず間違いなく、ノートパソコンを持っていってても使わなかったろう。賢明な判断をしたと思う。
 そして今回の帰省でノートパソコン入れを使わなかったら、もう持ち出す場面は金輪際おとずれないような気がする。そしてそうこうしているうちに、タブレットは買い換えられるのだろうとも思う。じゃあこのバッグっていちども正式には稼働しないのかもしれない。切ないじゃんね。