ビキニショーツ製作漫談 2


 先般から画像として上げている完成品の生地のセレクトから、どうしても誤解する向きがあるかもしれないが、このビキニショーツ製作の意図は、決して変態性の発露ではない。「ショーツ」と呼称し、ピンク色のボーダーとかだからといって、38歳の二児の父が歪んだ性的嗜好を持っているわけではない。そもそも歪んだ性的嗜好ってなんだろう。LGBTだのなんだのが、声高に叫ばれる昨今じゃないですか。僕はただ、インナーに限らず、一般男性向けの、紺やベージュやカーキみたいな彩度の低い色合いよりも、華やかでかわいらしい色合いのもののほうが好きなだけだ。その結果として、インナーを自作すると、ああいう、まるで女の子の穿くようなものになる。それだけのことである。

008
話の流れからは外れるが、かわいい生地だけで作っているわけではない。
でもこういうなんということもないグレーのショーツこそ、逆にリアルだとも思う。
まるで姉のいるクラスメイトが、姉のチェストから取ってきたもののようだ。

 露出方面の変態性はどうなのか、ということについては、「1」の中で切々と述べた。ゴワゴワでもなくパツパツでもない、圧迫感なくしかし包み込んでくれるビキニショーツが、(現在の僕における)インナーの最適解である、と。
 なにぶんビキニショーツというジャンルは、商品を検索すると、いくらでも布の面積が削ぎ落されたものが出てくるので、誤解を受けやすい。トランクスは穿きたくないけどボクサーパンツの締め付けも嫌だ、という願いを主原料にして成立しているジャンルなので(きっと)、そこから「表面積は小さければ小さいだけいい」という発想に向かうのも、不自然ではない。そしてその発想はやがて、「要するに陰茎と陰嚢さえ覆えればいいんだな」という境地に達し、そこの布部以外はほぼ紐、みたいな造形も生まれてくる。そういう発想に基くものだから、あれも決して露出方面の変態性によるものではないんだよ、と、それなりに大きな括りにおいては同グループとなる同輩を擁護したい気持ちもあるが、しかしながら公衆浴場やプールでそのようなインナーの人間がいたら、どうしてもぎょっとして、距離を置いてしまうだろうとも思う。

009
008と同じ生地の色違い。白。
ビキニショーツはただでさえブリーフと一緒くたにされがちなので、
白で作るといよいよその風味が強くなる。
でも白いズボンを穿くときにはこれが必須だ。
ちなみにこの生地では顔パンツことマスクも作った。

 なぜなら「陰部の覆い以外は極力しない」は、「陰部ばかりを強調」と隣り合わせであるからだ。本人がどれだけ「俺ぁ、圧迫感が嫌だからよぅ」と弁明したところで(口調はイメージだ)、やはりそれは客観的には「俺の性器どーだ!」にしか見えない。股間になるべく布を纏わせたくないという願いは、一歩間違うとすぐにその落とし穴に嵌まってしまう危機を孕んでいる。そしてその線引きは人それぞれなのだ。僕はなるべく面積は小さいほうがいいと思うが、だからといって紐を使用したり、Tバックにしたりすることはない。それをすると「俺の性器どーだ!」だ。しかしながら見る人によっては僕のビキニショーツだって、「面積が小さすぎて変態っぽい!」となるだろう。そこはもう人それぞれだから気にしてもしょうがない。大事なのは穿いている本人の気持ちだろう。
 僕が作り、穿いているのは、あくまでデイリーショーツだ。日常で使用するもの。必要性から使用するもの。いわゆる勝負下着のような機能は求めていない。ただし、トランクスを否定している主な理由がダサさであることを鑑みれば、やはりビジュアル的な目的があることもまた事実である。だから結果として勝負下着になるということはありうる。

010
全形が写せないので判りづらいと思うが、008と009を合体させて作っている。
フロントが白で、バックがグレー。
手作りならそんなこともできるなあ、と思って作ってみた。
そっけない白とグレーのデイリーショーツなのに、どっこいツートンという、
真面目そうな姉妹が実は……、みたいな感じになった、ような気がする。

 この論の流れを考えていて、ふと頭に「結果論的マイクロビキニ」という言葉が思い浮かんだ。なんだっけこの言葉……、と過去を振り返ったところ、2015年のcozy ripple新語・流行語大賞にノミネートされたものであることが判明した。その説明は、『暗黒物質や反物質に並んで、実態が掴めない存在として知られる水下着。ビキニの女の子がいたとして、その下に水下着を着込んでいると思えば、目の前に開示されているビキニよりも小さい面積で構成されるマイクロビキニ姿の女の子が発生するし、逆に水下着なんか存在しないと考えれば、水着の下はすぐ裸だということになり興奮が高まる。この作用をもたらしているのが結果論的マイクロビキニという謎の物質である。』とあり、書き手の頭が良すぎて意味がぜんぜん解らないが、最終的な解説が「謎の物質」なのならば解らないのもしょうがない。

011
一見細かい穴が開いた生地のように見えるが、実際に細かい穴が開いたメッシュ生地である。
なぜ細かい穴の開いた生地でインナーを作るのか。やはり変態性なのか。
そう問われれば、いや、通気性の問題だ、と答えるだろう。
また、つい出来心で、とも。
ニット素材と違い、生地自体に伸縮性がないので穿き心地はよくない。

 話が横道に逸れた。勝負下着か否かである。思えばインナーがボクサーからビキニショーツへと転換した時期と、体を鍛え始めた時期は近い。体が見目好くなったからショーツ派になったのか、ショーツ派になったことで体を鍛える必要性を感じたのか、今となっては定かではないが、ショーツはトランクスやボクサーに較べ、体を魅せるインナーであることは間違いない。なにぶん布の面積が小さいということは、露出する皮膚の面積が大きいということだからだ。じゃあそれってやっぱり露出目的の「俺の性器どーだ!」ではないのか、と話は堂々巡りするのだが、そう何度も、三顧の礼のように巡られては、こちらも少しは折れなければならないだろう、まあそういう側面もある。トランクスやボクサーに較べ、ショーツはだいぶ性器の存在感が強調されるインナーであることは間違いない。
 そしてこれは、言い換えると、性器をとても大事にしているインナーだということになる。次の記事ではこのことについて述べたい。