ビキニショーツ製作漫談 10


 前段からの話の続きである。
 前段の話がどこまでだったかと言うと、ちんこが前方に突き出すショーツを作ったはいいが、ジョニファー・ロビンにそれを穿かせても、ちんこを収めるために用意したそのスペースに入れるものがないので、ショーツの魅力を伝えることができない、というところである。それは果たしてどこなのだろう。いったい僕はどんな地平に立っているというのか。
 もっとも既に報告済みの事実として、これまでもジョニファー・ロビンには、手製の股間の膨らみを拵えていた。しかしそれは、これまでのガーリーライクをコンセプトにした、フロントを1枚布で作ったショーツによって、ある程度はそのボリュームを主張しつつも、しかし布の圧迫によって狭い空間に押し込まれた状態を表現したものなので、今回の「ちんこのびのびと」をコンセプトにしたのび助ショーツの着用図にはまるで使えない。前回の記事でも書いたように、ちんこは液体である。だからそれの模型もまた、器に合わせた形にしてやらなければいけない。
 というわけで僕は、のび助ショーツ用のちんこ模型作りに取り掛かったのだった。
 作り始める前にまず考えたのは、サイズに可動性が持たせられないか、ということだ。のび助ショーツの特長として、平常時には平常時なりに寄り添い、勃起時には勃起時なりに寄り添う、というのがある。これを表現するには、本物のちんこよろしくサイズを変えられる仕組みがあればいい。であれば、素材は1作目のように石粉粘土というわけにはいかない。
 それではじめに思い浮かんだのは風船だ。空気を注入および排出することによって、大きさを変える。それはもうほとんど人体の仕組みと一緒だろう。たぶんその機構で作られている人体模型はたくさんある。講習とかで使うような。しかし思い通りの形の風船を作る設備は持っていないので、これは断念した。
 次に、固まらない、何度も形を変えられる粘土と発想し、検索の結果、プラスチック粘土というものを見つける。これは粘土ではなく、要するにプラスチックなのだが、熱いお湯につけると柔らかくなり、何度でも変形させることができるという。下手な油粘土などだと、なにぶん布製品を密着させるので汚れの問題があるが、これならばその点も問題なさそうだ。これはいいと思い、ネットで注文した。
 そうして作る。作った結果、勃起したちんこをこれで作ろうと思ったら、注文した分量の3倍は必要になるし、だいぶ重くなるし、それになにより、熱いお湯で柔らかくなると言っても、塊が瞬時にグニグニになるわけではなく、湯に直接当たる表面がとろけるようになるだけのことで、平常時と勃起時を自在に行き来できるような、そんなAV男優のような機能性は望めない、ということが判った。
 これでいったんのび助ショーツ用ちんこ模型製作は暗礁に乗り上げてしまったのだが、しかし僕はあきらめなかった。この問題に取り組む僕の背景には、たぶん「地上の星」が流れていたと思う。風の中のちんこ、砂の中のちんこ、みんなどこへ行った、見送られることもなく。
 とにかく重さは問題だった。なにしろちんこが前方に突き出すさまを表現しようとしているので、重みがあるととても支えることができない。そのため軽量化は至上命題であった。
 そこで頭に思い浮かんだのは、発泡スチロールだった。発泡スチロールでちんこのだいたいの形を作り、その表面をプラスチック粘土でコーティングしてはどうかと考えたのである。問題点も数多くあったプラスチック粘土だったが、固まった際のなめらかな仕上がりにはちんこ模型としての可能性を感じていた。
 そこで僕はダイソーに向かった。ダイソーには、棒や円柱や球体の発泡スチロールがあるのを、知っていたからだ。しかしその販売コーナーで、僕は望外の出会いを果たす。
 それがこちらである。
 

 これを見た瞬間に、もらったな、と思った。
 ちんことは、要するにたまご型なのだ、と喝破したのだった。
 つづく。