ビキニショーツ製作漫談 13


 神と同じ悩みを抱えている。
 状況によってサイズが大きく変動する男性器を、如何なるデザインで覆えばよいか。
 興味深いことに、どんな宗教でもこの部分の説明は共通している。
 神は(8分ほど考え)、包皮を作りたもうた。
 ショーツのデザインについて考えると、結局は包皮にたどり着く。包皮とは究極のショーツなのだ、という真理に至る。悟りを開いた、と言ってもいい。
 であるからして、平常時に皮を被っているケースにおいては、既に覆っているのだから、男性はさらに下着を穿いてその部分を隠す必要は実はない。興奮をして勃起をしたときは、包皮から亀頭、すなわち男性器の中身が露出してしまうので、その場合はもちろん覆う必要がある。しかしそれを覆うのは、あなたを興奮させた女性の性器であるべきだ。そこに挿入をすることで、人目につかなくすればなんの問題もない。そしてその中に情欲を吐き出せば、男性器はふたたび包皮に覆われる。包皮で覆える状態になる。とても理に適っている。
 実際、なぜ包皮があるのに、下着などというものが生まれたのだろう。理屈に合っていない。神の意志に反するのではないか。神の怒りを買うのではないか。買うのだ。買った結果、人々の使う言語はバラバラになり、男性器は蒸れるようになった。蒸れて、熱に弱い陰嚢の働きが低下し、精子の数が減った。包皮の機能を蔑ろにし、布などで包むことで、人類は緩やかに絶滅へと向かわされている。
 ショーツ作りとは、それほど背徳的な行為だということだ。この記事の1行目のおこがましさ。ショーツを作るということは、神の加護を無碍にし、自分が新たな神に成り代わろうとする行為なのかもしれない。
 前回の記事で一応の完成を見せたかと思われたのび助ショーツであったが、あのあとでむくむくと、包む対象が対象なだけに、思念が、文字通り鎌首をもたげてきて、やはりせっかく作るのならば、ちゃんと勃起した状態もカバーできるようなものにするべきではないか、ということを思った。
 それはもちろんやろうと思えばできる。フロント部分を、とても伸ばせばいいのだ。そもそもガーリーライクショーツのスタート地点から、伸ばして伸ばして前回の段階まで至っていたわけだが、勃起仕様ということになれば、それまでとは別次元の広がりになるだろう。しかしその線を描くこと自体はそこまで難しいことではない。
 問題は、そうやってフロント部分を極端に長く取ったショーツは、平常時に穿くと、用意されたスペースを埋めるものがないため、余った生地がベロロンと垂れ下がってしまうという、その点である。
 この問題もまた、神がかつて悩んだ包皮問題と共通している。神はこれをどう解決なすったかと言えば、神はチートなので、「めっちゃ伸縮性に優れた(前に本で読んだが、実際に人体の中で一番だという)素材」で包皮を形成したもうた。これにより、平常時は亀頭を覆った上に先端で自然に窄み、排尿などの必要時は軽く剝いて鈴口周辺だけを出せばよく、そして勃起時はある程度までは皮が伸びるものの、しかし肥大化した陰茎をなおもすっぽり覆えるほどではなく、いい具合に存在感を消してカリ首を際立たせるという、本当に都合のいい包皮が出来上がった。しかしか弱き人間である我々にそのような素材はない。スパンデックスとかはだいぶいい線いっていて、その薄くて柔らかいタイプとかだと、かなりわがままな勃起にもまあまあ柔軟に対応してくれたりもする。でもどんなに伸縮性のある素材でも、今回の僕が求めているゴールには至らない。
 それというのも、前回の記事で、「勃起が初めて勃起として生地を纏った」ことの感動について書いた。スパンデックスはたしかに伸びる。しかし極端に言えば1本の棒である勃起によってフロントの中心一点だけが伸び伸びたショーツは、スラングで表現される通り、テントを張った状態であり、その部分だけが突き出て、円錐のような形を作り、何もない虚無の空間を生んで、陰嚢の存在感を消失させることだろう。それでは意義がない。包めてない。纏わせられてない。勃起に、膨張した肉棒と少し締まった金玉肉袋でワンセットの、勃起の形をした服を着せてやりたいのだ。それが、究極的には包皮で事足りる男性器を、あえて布で覆おうとする愚行の、唯一の意義ではなかろうか。
 しかし話は戻るが、勃起をかたどったデザインを求めれば、平常時にはどうしても生地が余ってしまう。それも極端にだ。それほどに、平常時と勃起時のサイズは違う。違っているからこんなにも愛しいし、こんなにも悩ましい。神からの挑戦状かもしれない。
 それでもまずは実践あるのみということで、勃起に対応するほどにフロント部分を大きくした型紙で、1枚作ってみる。失敗だった。もう1枚。やはり失敗。成功か失敗かを確かめるためには、そのたびに勃起をする必要があり、いろんな意味で労力を要する作業であった。途中でようやく、どうせ完成した暁にはまたジョニファーに穿かせて写真を撮るのだから、そのためにはちゃんとした勃起状態の模型も作らなければならないのだと思い至り、それを作ったことで(もう慣れてきたので気軽に造形できるようになった)、それを嵌めればよくなったので、修正作業が楽になった。
 

 これまでのものは「ああ、男性器の模型なのだな」と平然と眺めることができたが、勃起というのはやっぱり威力があるというか、なるほど偶像崇拝の対象にもなりうるパワーがあるな、という根源的なものをひしひしと感じた。ただのダイソーで買った発泡スチロールが、形次第でこんな気持ちを人に抱かせるのだからおもしろい。
 ちなみに、根元には既出のものと同じく、ジョニファーの股間のカーブに合わせてプラスチック粘土を固めていて、だから他のもそうなのだが、このちんこ模型は底の部分だけが(発泡スチロールに較べれば)突出して重たいので、横に置こうとしても、すぐに亀頭を頂点にして、ピンっと立ってしまう。その立ち上がり方が、とても縁起がいい気がして、そもそもオブジェとしてのパワーも強いので、ビジネスチャンスの香りがした。機構としては起き上がりこぼしと一緒で、そう言えば起き上がりこぼしにちんこver.ってないのだろうか、あって然るべきだろうと思って検索をかけたが、見つからなかった。でもないはずがないと思うので、見つけられないだけだろう。簡単に見つけられないのが不思議だが、どこかでは絶対に大ヒットしていると思う。僕は欲しい。
 肝心のショーツについては、次回の記事で紹介しようと思う。つづく。