冬キャスケット

 久々にキャスケットを作った。
 はじめに自分のものを作った。なぜか家にニット生地が異常にあるので、これでキャスケットが作れたらいいなあと思って作ったのだった。帽子の表地には全面に接着芯を貼るので、ニット生地でもそんなに問題はない。ちなみに今回は芯をキルト芯にしたので、完全に寒い時期仕様である。もっとも寒い時期仕様と言ったものの、作ってすぐに「おこめとおふろ」にも書いたが、なんかあまりにも非現実的な感じに仕上がったため、さすがの僕でも、家族と一緒だったらまだしも、ひとりでの外出時などにこれを被ることはないような気がする。
 こちらである。
 

 完成したものを見てまず思ったのは、タイムボカンっぽい、ということだった。ただし検索してもこんな帽子を被ったキャラクターは歴代のシリーズの中に存在しなかった。だとすればこれはタイムボカンの概念の帽子だと言えるかもしれない。
 試みとして、8枚はぎのクラウンの、上部と下部で生地を切り替えるということをした。本当は帽子全体を、ターコイズブルーと白のツートンにしようと考えていたのだ。しかしだいたいこんなもんだろうと定めた、クラウン下部の白生地の面積が、膨張色ということもあるのか、意図していたよりも大きい印象になってしまったため、急遽ベルトやブリムに臙脂の生地を持ってきて、結果的にトリコロールになった。それで余計に派手になってしまったのだと思う。
 被ると、色味はもちろんかわいいのだが、どんな服を着ていれば調和するのか想像もつかないし(白いつなぎとかだろうか)、あとニット生地だからか、どうしたって形が崩れやすく、とにかくなかなか被るハードルの高い帽子になってしまった。

 そんな僕の新作帽子を見て、ピイガが自分にも作れと言ってくる。ピイガの場合、ただバリエーションとして新作を欲しがっているだけの話ではなくて、前に作った夜の森の動物たちの生地の帽子が、さんざん被ってボロくなったし、なにより少し小さくなったらしい。頭が大きくなるって、体の成長以上にハッとさせられる。子どもは、脳がまだこれからどんどん機能を向上させてゆくのだ。それって夢のような話ではないか。可能性は無限大、とはこういうことを言うのか。加齢とスマホで退廃してゆく一方の脳とは違うんですよ。
 というわけで作る。ピイガもツートンがいいというので、同じ趣向のものを作った。
 それがこちら。


 こちらもニット生地。黄色とチャコールグレーのツートン。こちらは僕の製作の反省を生かし、クラウンの生地の切り替えをとても細くしたので、ベルトもブリムも同生地で仕立て、正真正銘のツートンにした。しかしここまでクラウンの切り替えがわずかだと、ベルトと同化してしまい、果たして切り替える必要があったのか、という気がしてくる。8枚それぞれをそこで縫い合わせ、隣のパーツと縫い合わせる際は切り替え位置の高さがずれないよう気を遣うという手間に、効果が見合っていない気がする。なかなか難しいな。
 これと同時に、ピイガにはもうひとつ作る。こちらである。
 

 こちらはクラウンごとに色を変えるパターン。こちらのほうが趣向としてはオーソドックスだろうと思う。これはニット生地ではなく、コーデュロイっぽい布帛。コーデュロイっぽい生地をこれだけのために買ったのかと言えばもちろんそんなことはなくて、製作のタイミングでちょうど衣替えがなされ、「これらはサイズアウトだから捨てるつもりだけど生地を取ったりボタンを取ったりするんならすれば」の塊の中に、スカートがあったのである。去年までは現役だった、こちらのスカート。
 

 このピイガが穿いているスカートが、山吹色、ライトグレー、白という3色の、台形のパーツを接いで作られたもので、このひとつひとつの台形が、クラウンを取るのに本当にちょうどよく、ブリムとベルトもなんとか取れそうだったので、帽子に生まれ変わらせることにしたのだった。こういうことってたぶん初めてやったが、なかなか愉しい作業だった。「ソーイング・ビー」みたいな気分だった。
 

 やはりニットじゃないので形が決まりやすく、かなりいい仕上がりになった。もともとが捨てるはずのスカートだった、という事実が、格別の達成感をもたらす。
 帽子作りももっとしたい気持ちはあるが、いかんせんわりと手間なので、なかなか重い腰が上がらない。それでもわざわざ作るときは、やけに奇抜な生地を用いてしまったりするので、一か八かの仕上がりになり、とてもリスキーなのだった。でもクラウンごとに色を変えるタイプのやつ、いいな。自分用にも欲しいな。作るかもしれない。