ビキニショーツ製作漫談 17


 「ビキニショーツ製作漫談」というタイトルを振りかざし、なんてったって漫談なんだかんな、ということで、本当にそぞろな、地味な、本人以外はたぶん誰も興味がないであろう話を、1年の最後にしたいと思う。画像もないので、本当に取っつきにくい内容である。でも150年後くらいの誰かひとりくらいに届けばいい(生まれ変わった僕自身かもしれない)という思いで書く。
 これまで作ってきたショーツではずっと、「腰ぐり脚ぐりなど輪状になった部分にオーバーロックを掛けようとすると、どうしても掛け始めと掛け終わりで重ねなければならず、その部分がごわつく」という問題を抱えていた。また縫い終わりには糸の端が出るため、もちろん短く切るのだが、洗濯をするとそこがグジャっとなっていたりする。なるべく目立たないよう、腰ぐりに関しては背中の中心、脚ぐりに関しては股の最も底の部分で重ねるようにしているが、それでもその部分の拙さは僕のショーツ製作におけるコンプレックスであった。
 この問題をいかにして解決するか、長らく考え続け、あるヒントをもとに、ひとつの方法を思いついた。
 ヒントになったのはスイムウェア作りで、こちらも脚ぐりのオーバーロックに関して同じ問題を抱えていたが、あるとき、フロント側とバック側を、股布で繋いで縫い合わせたあと、左右のサイド辺を縫い合わせてパンツの形にするわけだが、そのサイドを縫い合わせる前の段階でオーバーロックを掛ければ、端が縫い代で処理されるので仕上がりがきれいだ、ということに気付いたのだった。気付く人なら1枚目から気付くであろう気付きである。
 そして1枚仕立てのガーリーライクショーツでもこの方式を採用してはどうかと思った。これまでは行程として、サイドを縫い合わせ、輪状になった脚ぐりに同じく輪状にしたゴムを縫い付け、そこにオーバーロックを掛けていた。
 ちなみにこの「輪状にしたゴム」というのもこの問題の一端を担っており、輪状にするためには当然、適当な長さに切ったゴムの両端を少しだけ重ねて縫い留めるということをするわけだが、そうすると重ねた部分だけが分厚くなる。この分厚くなった部分をオーバーロックが乗り越えようとするとき、動きが滞ることが多々あり、そうなるとそこだけオーバーロックの環が見苦しく歪み、また忌々しくなるのだった。
 しかしこの方式ならば、それも同時に解決するはずである。なにしろまだ輪状になっていない所へ、同じく輪状にしていないゴムを縫い付けるわけである。これにより段差は生まれず、そして縫い重ねもない、整然としたオーバーロック処理が実現するはずであった。
 実際にやってみた結果どうだったかと言えば、なるほど股の部分のごわつきは解消した。サイドの縫い合わせの部分で、縫い代がこれまでよりも若干盛り上がる感じにはなったが、それは全体の完成度からすれば些末事であると思った。
 これにより僕の作るガーリーライクショーツは、また一段階梯を上った。

 もうひとつ別のショーツ関連の話をしたい。
 そもそも僕の作るガーリーライクショーツは、少しフロント部分のゴムに指を引っかけただけで簡単にちんこがぶぉろろぉぉんとするほどローライズではあるのだけど、それでも飽き足らず、もっと多彩なちんこぶぉろろぉぉん方式はないものかと、日々模索をしている。
 その中で以前から気になっているのは、フロント部分が合わせになっているだけで、閉じておらず、なんならその穴からすぐに顔を出させることができるという仕組みである。昔ながらの白ブリーフや、あるいはトランクスなど、そのふたつは正確には開放部の作りが一緒ではないけれど、要するにああいうイメージだ。
 これのメリットは、腰ぐりを下げるわけではないので、衣類としての下着を脱ぐわけではなく、しかしちんこを出すことができる、という点だと思う。やっぱり下着を脱ぐとなったら、それはもう言い訳が立たないというか、情状酌量の余地がないけれど、脱いでいない限りは赦される部分というのがあると思う。もしかするとそれは、人によってはないがごときわずかな質量かもしれないけれど、でもスーパーカミオカンデで観測した結果、たしかに存在は確認されたのだ。
 というわけで今年、気が向いたときにその方式への挑戦はちょくちょくやっていた。
 やるにあたり、合わせ目は左右ではなく上下がいいのではないかと直感し、そちらで制作を進めた。左右の合わせ目だと、ぶぉろろぉぉんに対する情状酌量といいつつ、実はかなり恣意的に引っ張り出そうとしなければ、ちんこは出てこない。それに対して上下の合わせ目は、重力の助けもあって、よりちんこがぶぉろろぉぉんしやすいのではないかと考えたのだ。それにしても、なぜ僕はそんなにちんこを気軽にさらけ出したいのだろう。それはもちろん性的な、ちんこすさびの一環としてなのだけど、ちなみにこの、よりちんこが出しやすいよう、ちんこが出しやすいよう、という希求は、究極的には介護の現場へと到達する。あるときがむしゃらに、前面が大きく開くような、とにかくちんこが出しやすいボトムスの型はないものかと探っていて、これなんかいいんじゃないかと目に留まったのは、被介護者用に考えられたもので、なんとなく冷や水をぶっかけらたような気持ちになった。そうか、性器が出しやすいというのは、そういうことか。
 でもそんな背徳感に挫けることなく、ちんこすさびとしての露出用ショーツの試作は行なった。これまで通りのフロント型を、それぞれに縫い代分を足して上下に分割し、そしてその中央部は縫い合わせず、普段はなんとなく閉じている感じになるけれど、肉棒に血が集まって体積を増し硬くなると、逃げ場を求めて開口部からひり出てくるという、これはそういう仕組みであった。ざっと作ったものを穿いてみたところ、試作なのでいろいろ問題はあったが、少しずつ改善していけばものになるような感じはあった。しかし穿いて鏡に映った姿を見てびっくりしたのだが、僕はその試作を、分割した上部は青の生地で、下部は黄色の生地で作成しており、本当にこの瞬間まで思いが至らなかったのだが、それはまさしくウクライナの国旗の柄なのであった。ただでさえちんこの出しやすさの希求は被介護者への冒涜を含むのに、その上それがウクライナ国旗を模していて、その分かれ目からちんこがぶぉろろぉぉんする趣向となれば、なんかそれはもうあまりにも悪趣味で、不謹慎の度を超えていると思った。もはやこれは露出願望なんかではなく、わざと顰蹙を買うようなことをしようとする露悪願望だし、ウクライナカラーのショーツからちんこがぶぉろろぉぉんするのが「露悪」だなんて、なかなかよくできたうまい話なのだけど、なんかいろんな意味で本当にアウトだな、と思い、それ以来このショーツの試作はストップしている。
 でもまた来年はこの試作を進めていきたいと思うし、なにより世界は平和になればいいと思う。武器なんて、脚の間にあるこれだけで十分だろ、って僕は思うんだ。