ボックス型スイムウェア製作漫談　３　～販売開始のお知らせ～

　この兼ね合いは最終的にどういう結末に至ったか。どの程度、ちんこにのびのびさせてやり、そしてどの程度、ちんこを抑えてやったのか。その加減を言葉で伝えるのは難しい。

　でも見れば一目瞭然である。

　自分と自分のスイミングライフを実験台にした試作を繰り返した結果、とうとう「これだな」と思える、現時点での最適解へと至った。

　こちらである。

　前回「２」で説明した通り、フロントは４つのパーツに分かれていて、デザインの骨子はもちろん中央部分、要するに男性器部分である。ただしこの正面からの画像では、ちょうど生地の柄がマーブルということもあり、立体感が掴みづらいだろうと思う。

　というわけでこちら。

　このくらいである。まあまあ出ている。ように見える。

　ただしビキニショーツ製作漫談でさんざん述べたように、ちんこというのは液体なので、常にこういう形になるわけではない。この画像はもちろん、ジョニファーに手製のアタッチメントちんこマネキンを取り付けて撮影しているので、それはどうしたって無限のバリエーションのあるちんこ膨らみの、一瞬を切り取ったものでしかない。実際はもっと縮んでいて、生地が張らずに若干くしゃっとする場面もあるし、逆に、気づけばやけに陰茎が前に突き出る配置になっていて（勃起したということではなく）、「おっと（苦笑）」となる場面もある。

　ちなみにプール側から注意を受けたことはもちろん一度もない。他人は他人の水着のことなんか、思った以上に見ていないのだ。ならばどこまでも着ている自分本位に、自分の気分がアガるものを身に着けるのがいいに決まっている。

　さらにこのスタイルにはもうひとつ、望外のメリットがあった。水中に入って気づいたが、水中のちんこって本来、ちょっと浮遊するものなのだ。陸上において、空中にある際は、重力によって垂れ下がるわけだが、水中の場合、水の浮力によってプカプカと浮かぶのが正しい。そしてこのボックス型スイムウェアは、その水中におけるちんこの正しい形を実現させてくれるのである。それはこの世の男性の多くがまだ体験したことのない感覚、いや、母の子宮の中、羊水に浮かんでいたとき以来の感覚であろうと思う。

　フロント部分の膨らみ以外にも工夫がある。

　まず、へそからの距離感や、太ももの付け根と鼠径部の隔たりを示す窪み（「ビキニブリッジ」というのが一般名称だが、僕は「iスポット」と呼んでいるもの）が発生していることからも察せられるように、ずいぶんなローライズ仕様である。

　ちんこの膨らみを作ってやることに関しては、その理由をつらつらと述べてきたが、これについてはどう申し開くというのか。結局のところ、お前はなるべく裸に近い恰好で人前に出たいだけではないのか。

　いえ、そうではありません。私が使用している生地は、用途として「水着やレオタード、スポーツウェアなどにおすすめ」とされる2WAYのものですが、とは言え一流スポーツ用品メーカーが自社開発しているような、生身の体よりもむしろ水の抵抗を軽減する高機能繊維などではありませんので、どうしたって生地はなるべく少ないほうが都合がいいのです。ただしはじめのほうで申し上げましたように、ビキニ型というのは自己の倫理に反しますので、その結果がこの、ローライズ仕様のビキニというわけでございます。

　しかし水の抵抗を軽減するなどと申すわりに、お前はちんこという、めっちゃ水のスムーズな流れを妨げそうな存在を、通常の仕様よりもだいぶ強調しておるではないか。それについてはどう説明するのだ。

　だからこそであります！
　……なんだと？

　ちんこに関してそのような大きなハンデを背負う運命であるからこそ、私はその分、それ以外の部分で水の抵抗を減らす必要があるのです！　巨根は、いいことばかりではないのです。巨根には……。

　巨根のつらさがある、か。私は正義を追求するあまり、本当に大事なことを忘れかけていたのかもしれんな。お前のおかげでその蒙が啓けた。礼を言うぞ。

　……お上！

　そして背面はこう。もちろん尻の割れ目が見えることはない。コモンセンス。公序良俗。

　かくして完成したオリジナルデザインのボックス型スイムウェア。万感の思いである。自信作である。これを穿いて泳いでいると、ただの水泳の気持ちよさが、さらに何倍にも膨れ上がる。もしかすると、ちんこのための膨らみの分だけ、水泳の気持ちよさというのは膨らむのかもしれない。世界の人々の多くは、まだそのことに気付いていないのかもしれない。

　こんないいものを世界で自分だけが穿いているなんて、もったいない。それはもう罪だと思った。僕は無理数の存在をひた隠しにしようとしたピタゴラス教団ではない。勇気あるヒッパソスになりたい。

　というわけで、こちらのボックス型スイムウェアを、世界に向けて販売することにした。

　実は半月ほど前から既にしている。Yahoo!フリマである。

　上記の画像のものの販売ページが、こちら（https://paypayfleamarket.yahoo.co.jp/item/z315571964）である。

　他に、こんな柄もある。