ピイガが裁縫をする。手でもフェルトなどをチクチクやるし、ミシンもあるのでそれでシュシュを作ったりもする。とてもいいことだと思うし、なにより嬉しい。だって僕がやっているのを見て、自分もやりたくなったということだろう。すばらしいではないか。
先日は「これを作りたい」と言って、YouTubeを見せてきた。
ボディバッグである。ちょっとハードルが高いのではないか、トートバッグとかでいいのではないか、と思った。だってこれ、どうしたってだいぶ手助けが必要だろう、と。しかしいちど決めたら曲げる人間ではないので、材料を揃え(リュックサックのときもそうだったが、安物の完成品よりも材料代のほうが高い)、作り始めた。
分担として、諸々の世話はファルマンがやって、難しい部分であったり、硬くて工業用ミシンではないと厳しい箇所の縫いであったりを、僕がやった。でもだいたいはピイガがほぼ自分で仕立てたと言っていい。よくやったもんだと思う。
完成品がこちらである。
生地選びの際、無地がいいと言うので、不可解だと思った。リュックのときもそうだったが、ピイガはあえて無地を選ぶのだな。まったくもって不思議だ。父の影響でハンドメイドに興味を持ちながら、生地選びに関しては反動のようにシンプルを好むらしい。そこは袂を分かったか。
内布はさすがにちょっと華やかな生地。これは僕の生地の在庫から提供した。ちなみにだが山吹色の本体によく映えている緑色の紐は、僕がトートバッグ作りに傾倒していた時期に勢い余って作りすぎた持ち手部分であり、「2.5センチの紐を作んなきゃいけないのか」となったとき、「既にステッチの入った2.5センチの紐があるからこれを切って使えばいいよ!」とそんなピンポイントなものを差し出されるというのは、なかなかのレアケースだろうと思った。
ピイガは「作りたい」と思ったものは、忍耐強く、意地でも作るので、それは気質としてとてもよいと思う。そんなピイガに触発されて、僕も同じものを作ることにした。
完成品がこちらである。
この生地は、母のワンピースなどを作ろうと思ってネットで買ったもので、だから4メートルくらいあるのだけど(安かったのだ)、届いたらめちゃくちゃ重くて、遮光で、テントとかに使われるような感じの生地だったため、ずっと使いあぐねているものだ。今回、それを使った。ボディバッグだし、防水のような感じになるのではないかと目論んだのだ。融通が利かず、とても縫いづらかったが、まあ期待通りの効果は得られた。
内布は黄色。写真では誤解しそうだが、ピイガの表地ではない。あちらは帆布。こちらはポリエステル。表も裏も伸びない生地なので、本当に縫いづらかった。
完成して、いちどだけこのバッグで外出したが、僕はこれまでボディバッグというジャンルに縁がなく、それはなぜかと言えば、僕は基本的に荷物が多い人間だからで、財布とスマホだけがすっぽり入って、両手が空いて、身軽で済むという、利点はもちろん分かるのだが、でもやっぱりこれは僕が持つタイプの鞄ではないな、ということを思った。なのでこれは、ただ作られただけで、今後だれにも使用されないと思う。切ない。立ち枯れバッグ。作ろうと思えば、あと30個くらい作れそうなくらい、生地だけはあるのだけども。