Nobitattleスイムウェア創作秘話ひとり語り


 スイムウェアは細かく型紙を修正してきた、と書いた。やはりショーツに較べてパーツが多い分、修正の余地があるわけで、気付けばショーツよりもはるかに多くの変遷を経てきた。
 最初期の仕上がりはこのようなものであった。


 この写真は、今ではすっかり投稿が停まってしまったInstagramにアップするつもりで撮影したもの。画像のデータには2022年8月16日とあるので、もう2年も前ということになる。実物があれば改めて撮影したのだけど、かなり探したのにとうとう見つからなかった。収納が飽和状態ということもあり、案外捨ててしまったのかもしれない。よくないことだ。自分にまつわるあらゆる創作物について、「後世、研究者が資料にするかもしれない」という思いを持ち、なるべく取っておこうと考える一方で、そのときの気分によってためらいなく捨ててしまうこともある。後世の研究者どころじゃない、2年後の自分自身が必要とするかもしれないというのに。
 そのため画像で確認するよりほかないが、ボックス型ということで基本的なフォルムは現在のものと共通しているものの、大きな違いとして、縫い合わせた部分にステッチをかけていない。スイムウェアというのはそもそもそこまでステッチを施すものではない、なるべく生地に穴が開いていないほうがいいのだからして、というのもひとつの事実ではあるが、いまの僕はあえて、1本のみならずダブルステッチまで掛けている。
 比較として、最新版がこちらである。前回の記事、2024オータムコレクションのあと、さらにこの1枚を作った。なのでこれが本当に直近の作。


 2枚を見較べると、いろいろブラッシュアップしたのだなあ、という感慨がある。
 初期にステッチを掛けなかったのは、ステッチをあまり必要としない、のっぺりした作りだった、というのも理由のひとつだろう。初期作の画像、横からのショットは残念ながらないのだけど、見るからにあまり立体感はない。果たして2枚の布を縫い合わせる意味はあるの、というくらいの扁平さだ。それに対して最新のほうはこうである。


 生地にとっては初期作のほうが自然で、最新作のほうが不自然ということになる。しかしなにぶん包む対象が人体の中で自然な流れから大きく逸脱した、不自然すぎるものなので、どうしたって生地にはアクロバティックな無理をさせるほかない。2way生地だから可能になる離れ業であると言えよう。そしてこうなってくると、ステッチも1本では足らず、2本掛けて縫い代をしっかりと落ち着かせ、さらにはプレス的なアイロンも行なって生地を馴らす感じにしてやらないと、仕上がりがガタガタになってしまう。それで掛けている。
 加えて耐久性の問題もある。この処理は、本縫いのあと、2枚いっぺんにロックして、縫い代を倒したあとステッチを掛ける、いわゆる伏せ縫いと呼ばれるもので、とても強い。それに対してステッチなしの初期作は、たぶん縫う前に裁ち切りにロックを掛けて、それを縫い合わせて縫い代を割っているだけなので、弱い。左右2枚の布を引っ張れば、縫い合わせた部分は糸だけを残し、布と布の間には空白ができることだろう。そして糸が一本切れようものなら、メリメリっと裂けて、スイムウェアには大きな穴が開くこととなる。
 それだのに、である。


 なんと最初期は、尻も左右で分けて作っていたため、中央に縫い合わせ部分があった。
 今はない。バックは1枚布である。


 糸が1本切れたらすぐに大穴になるのに、尻の中央に縫い合わせがある。いま思えば、これのなんとスリリングなことか。泳ぐ前の準備体操で屈伸などしたら、その瞬間に大惨事が起ってもおかしくない。スーツのズボンなどでたまにそういう現象が起って、そこからハート柄の派手なトランクスが覗ける、みたいなギャグがあるけれど、スイムウェアでそれが起った場合、笑い事では済まない。さらけ出されるのは肛門と蟻の戸渡りである。まったく笑えない。
 あと型紙の話ではないが、腰紐を通す穴を、最初期は内側に拵えているようである。画像で紐は外側に出しているが、中に入れた状態だとスイムウェアの形が分からなくなるので、わざわざ引っ張り出しているのだと思う。それに対して今は穴を外側に拵えている。そして僕は泳ぐときも、紐をそのまま外に出した状態で泳いでいる。これは、一般的には紐は内側に入れる傾向があるが、せっかくちんこにとって居心地のいい空間を作っているのに、そこに紐などという異物を混入させるのは嫌だというのもあるし、それと紐を前面に出して主張させることで、くれぐれもこれはスイムウェアですよ、ということをアピールするという意味もある。僕のスイムウェアは、形もわりと独特だし、柄もスイムウェアっぽくなかったりするので、その部分をきちんと知らしめないといけない。安心してください、スイムウェアですよ、という意味での外側の紐なのである。
 そんな数々のこだわりの詰まったオリジナルスイムウェア。前回の記事で値下げの葛藤について書いたが、いよいよ断行してしまった。そのお値段、なんと2480円。信じられない。逆にハンドメイド畑の人から叱られるのではないか、というくらいの大安値。お試し商品の3点なんて2100円である。おいおい、と思う。


 でもとにかく売れないことには意味がないので、しょうがない。売れて、火が付いたら、原油高や人件費の高騰を理由に、じわじわ値上げしていこうと思う。