海や屋外プールにはある。夏だ。温度管理されていない水の中に飛び込んで寒くないのは、実は夏しかない。だからそういった場所での遊泳が夏に特化したものであることは認めざるを得ない。
しかしそのイメージに引っ張られて、屋内プールでの水泳行為を夏以外、特に冬場のそれを奇特なものとして見るのは大きな間違いだ。だって我々にとって泳ぐことは、趣味であり習慣だろう。だとすれば季節なんて関係ないはずだ。
つまり僕はなにを言いたいかと言うと、スイムウェアにウィンターコレクションがあったっていいよね、ということだ。もちろんいい。もちろんいいが、ただでさえ売れ行きが芳しくないオリジナルデザインスイムウェアの、その冬ver.ともなると、その需要はもはや幽玄の領域に足を踏み入れていると言える。マーケティング的な概念に真っ向から対立する、これは祈りにも似た尊い行為のような気がしてきた。気のせいかもしれない。
まずこちら。
ノルディック柄というのであろうか。生地はもちろんスイムウェア用の化学繊維でできた2wayだが、ニットをイメージしているようで、編み物的なデザインになっている。さすがにこれを見て「もしかして毛糸?」と思う人間はいないだろうが、ちょっと騙し絵っぽいと言うか、いたずら心があって愉しい。編みの描写がよく見るとハート型であり、小さいハートの連なりで図柄が出来上がっている、というのも小粋である。ちなみに僕はちょうどこれと同じような色とデザインのセーターカーディガンを持っているのだが、そのセーターカーディガンとこのスイムウェアが共演することは、僕の頭がトチ狂わない限り起り得ないであろうな、と思う。
続いてこちら。
こちらもノルディック調ということになるか。こちらは編み物風というよりはドット絵っぽいテイスト。自分の実際の記憶にあるわけではないが、幼少期のアルバムに写る若き日の母が着ていたセーターのようなデザインだな、と思う(全国民の35%くらいは共感してもらえるのではないか)。スイムウェアだけど、ノルディック調で、でも暖色という、いったい見た人はどういう印象を抱けばいいのか、製作者ながら、もはやよく分からない。ちなみに柄合わせにこだわっていたら、いつもは3枚分とれるのに、これはどうしても2着しか作れなくて、だとすれば販売分は1枚限りということになり、この世でこのスイムウェアを持っているのは購入者と僕のふたりだけだと考えると、ちょっと運命的な香りが出てくると思う。出品された際は急いで買うべきだと思う。
続いてこちら。
緑と黒のチェック柄に、雪の結晶が舞うという、とにかく冬っぽい柄。
『鬼滅の刃』にいまさらながらハマり、炭治郎のあの柄の生地でスイムウェアを作りたいと思ったが、販売されているのは正方形の一辺が5cmと大きすぎるのでままならない、ということは前にどこかに書いたが、この生地はちょっとその鬱憤を晴らす効用もあり、とてもよかったと思う。雪の呼吸。それにしてもちょっと冷静に考えると、温水に浸るのに雪の柄って、いったいなんなんだろう。なにがしたいんだろう。考えたらダメだけど。
いかにも冬という柄は以上3点。
続いてこちら。
黒地に蛍光オレンジのドット柄。ドット柄は見ると魅力を感じて注文しがちなのだが、実際にスイムウェアにすると、わりと下着感が出てしまい、堂々と穿くのが憚られたりもする(まだ僕にもそういう良識がわずかながら残っているのだ)。こちらは蛍光色ということで大丈夫なのではないかと期待して注文した。結果として、大丈夫と言えば大丈夫だし、ぎょっとすると言えばぎょっとする感じというか、このスイムウェアの違和感はもはや柄だけの問題じゃないわけで、それならもう気にするだけ無駄だな、とも思うのだった。
続いてこちら。
幾何学柄。作っているとき、このデザインってなんかに似てるよな……と思って考えていたが、途中で分かった。オーケーストアのロゴだ。でも実際に検索したら、そんなには似ていなかった。どっちでもいいけど。幾何学模様って、ゴテゴテしていなくてかっこいい。端正だ。これを穿いていると、ちょっと偏差値が高い人だと思われるかもしれない。
最後にこちら。
色違いもあって、どういう柄なのかと言えば、スパンコール的な趣向なのだと思う。一瞬スパンコールなのかと思うが、もちろんそんなスイムウェアはあり得ない。スパンコール柄である。浮かび上がり度合も含めて、なかなか狂気成分強めなデザインだなと思う。
以上である。なかなかバラエティに富んだラインナップを用意できたのではないかと自負している。ちなみに数えたところ、販売用の在庫は50枚を超えた。減っていかず、増える一方だ。これが逆だったら櫛の歯が欠けるように切ないだろうと思う。50枚も在庫があると、とても満ち足りた気持ちになる。富だな、と思う。だからそれでいいんだと思う。もっともっと増やそう。一向に買おうとしない人類に対し、僕ばかりが豊かになればいいと思う。