連休の成果報告


 奇跡の9連休と言われた年末年始のお休みで、ひたすらに、というわけにはいかなかったが、ひたむきに、それなりに、やりたいと思っていた裁縫関係のことが進められたと思う。ピイガのコートとキャスケットも完成したし。
 また前々回の記事、「ビキニショーツ製作漫談 18」で宣言した、ショーツの型紙を刷新する試み、結果としてこれはどうなったかと言えば、「刷新」や、「一から見直しました」などという表現を使ったら、「どこがやねん」と言われる程度の、きわめて細かい修正にとどまった。これについては言い分がある。堂々と釈明することができる。
 なぜなら、僕のショーツの型紙と来たら、もはやほぼ最適解なのである。
 ジョニファーに穿かせ、自分で穿き、そして型紙を睨んで、しみじみと思った。これ以上やりようがない、と。
 なにしろ一枚布である。フロントとバックまでが繋がり、ちょうどルビンの壺のような図形になったものを、サイド部分の2ヶ所だけ縫い合わせてショーツの形にし、あとはゴムのことをしたらそれで完成という、究極的にシンプルな設計。だから裁断から完成まで、うまくいけば20分も掛からない。そんな簡潔な作業で、人間の身体において最も歪な、不自然に突き出ている、さらに言えばモデルとなる製作者のそれは人類の中でも取り分け巨大と来ているものを、収容しようというのだ。本来なら、どだい無理な話なのである。だからフロントはつい、左右合せの立体設計に逃げたくなる。収容物のことを思えば、たしかにそのほうが自然だ。でも立体設計を許してしまったら、それは本来の創作の動機であった「ショーツ」という言葉からは乖離してしまう。やはり確固たる信念の下、フロントも一枚布である必要があり、その制約の中でこれ以上のやりようはない、これが人類の最高到達点だろうと思った。
 というわけで研究の「答え」として、この休みの間に製作したものがこちらである。


 ちなみに「雑談 18」において言及していたサイド部分の幅、当初2cmだったものが直近では1cmになっていて、ということだったが、最新作のこちらはどうなったかと言えば、それは1.5cmなのであった。セクシーなのキュートなのどっちが好きなの、などとのたまっておきながら、結局どっちつかずなんかーい、という話だが、これについても弁明がある。聞いてほしい。使用しているゴムの幅が、7mmなのである。それを腰ぐりと脚ぐりに縫い付け、折り返し、ステッチするわけだが、そのためここの幅が1cmで仕上がるということは、腰のゴムと脚のゴムが重なっている、ということを意味する。そう言われて見てみると、「雑談 18」の2枚目のショーツ画像のサイド部分は、少しモコッと分厚くなっているのが見て取れる。セクシー路線と言いながら、これはあまり見栄えがよろしくない。というけで、7mmの2本のゴムがギリギリで重ならない1.5cm、これがサイド幅の最適解だ、ということになるのだった。


 横から見るとこのような感じ。股間の膨らみも、サイド幅も、熟慮の末にここへ辿り着いたのだな、という感慨がある。股間の膨らみは、結局ニット生地のストレッチ度合にだいぶ依拠するわけだが、ちなみに画像で使用しているこの生地は、そこまで伸びるものではない、ということをここに主張しておく。横の伸びもそれほどでもないし、縦にはほとんど伸びないと言っていい。それの一枚仕立てで、この膨らみを作り出しているのだ。これって実際けっこう高い技術なのではないの? 気のせい? と思う。孤独な趣味すぎて、誰からも評価がもらえず、思惟はたゆたうばかりである。
 

 唯一得られる他者からの評価と言えば、ファルマンによる「アウトだよ」「お縄だよ」「案件だよ」などの誹謗中傷、罵詈雑言ばかり。なんという不遇な扱いであろうか。最期、ルーベンスの絵の前で斃れたとき、ショーツ姿の僕は全裸の天使たちによって召されてゆくのかもしれない。天使ども俺のショーツ穿けよ!
 ちなみにだが、連休中の裁縫時間で最も時間を割いたのは、実はショーツではなくて、スイムウェア製作である。しかしこちらは2枚しか完成させることができなかった。なぜか。
 正解は…………、


 30枚同時に作っていたから、である。
 家にあった2way生地で、スイムウェア分の生地が取れそうなものを、今回ほとんど裁ってしまった。それを工程ごとに同時進行で作業していたため、1月3日の初泳ぎに使用したものなどを除き、全体としてはぜんぜん完成に至らなかった。ちなみに分かりにくいと思うが(よりにもよっていちばん上をランダムなドット柄にしてしまった)、画像は4枚構成のフロントパーツのダブルステッチまでが完了したものを、積み重ねた状態である。ちなみにこのフロントの立体ポーチがNobitattleスイムウェアの肝なので、ここにはダブルステッチのあと特製の万十を使ってアイロンを掛ける(販売価格2480円のなんと安いことか)。
 今はこの画像よりももうちょっと進んで、ここに白の股布を縫い付け、さらには反対側にバック布も縫い付け終わった。あとはもう淡々と工程を進めてゆくだけなので、平日も含めて少しずつ作業をし、着々と仕上げていこうと思う。
 あとこの期間にやったこととして、これも前から構想していた、こちらを作った。
 

 画像だとさっぱり分からないな。水泳キャップである。
 先日、手持ちの水泳キャップ(2枚)の、よく被っていたほうに、寿命が来たのである。水泳キャップって明確に寿命があって、ある瞬間に生地に張りがなくなって、ベローっとなるのだ。それで使えるのが1枚になってしまったので、追加で買わなくちゃいけないなあと思っていたのだが、いや水着が作れるんなら水泳キャップも作れんじゃね? と思い、このたび実際に作ってみた次第である。
 持っていたものを参考にして製作した。左右の側面パーツと、前から後ろまでの中央パーツを裁ち、それぞれを縫い付け、縫い代を処理し、下部にゴムを縫い付けて、内側に折り込んでステッチ。行程はたったそれだけで、使用するのになんの過不足もないものが出来上がった。
 買っても500円ほどなのだけど、僕の場合、家に2way生地がやけにあり、ストレッチ生地用のミシン糸もたまたまあるので、作ったほうがよっぽどいいや、と思った。
 ファルマンに見せたところ、こちらの評価は上々で、「(スイムウェアは変態的だから売れねえけど)こっちのほうがむしろ売れるんじゃない?」と言われた。それで少しその気になったのだけど、多彩な柄の2way生地はちょうどほぼ裁ち尽くしてしまったタイミングであり、画像にあるような無地のものであれば、世間の人たちはそれこそメーカーのものを500円くらいで買えばいいわけで、これを販売用に作るとすれば、それは次に新しい2way生地を注文したとき、スイムウェアを裁ったあとのはぎれとかでやる感じかな、と思った。
 とまあそんな感じで、冒頭でも言ったが、けっこうやろうと思っていたことができた、充実した連休だったと思う。水泳と裁縫というふたつの趣味が両輪となり、なんかどこまでも回転して進んでゆく感じになっているのを感じる。いい状態だな、と思う。